痛みについて 9
こんにちは。
陽光堂鍼灸院の斎藤です。
途中痛みの症例について、ご紹介してみました。
鍼やお灸でも、痛みについての改善がみられることが、分かっていただけたのかなと思います。
ただ、私の治療では、改善しなかった例もあります。
基礎疾患をお持ちの方や、超慢性症状の方に対して、改善のなかったこともありました。
分析力の不足なんでしょう。
大いに反省するところです。
これまでご紹介してきた痛みについて、身体に起こる症状を、いろいろなパターンに分けてきました。
また、別の考え方もできることが分かっています。
それは、同じ類の痛みでも、人によって感じ方が違うということ。
痛みの強さが、人によって違いがあることがあるということ。
同じ人でも、状況によって痛み方が変わることがあるということ。
なんだか、身体に起こる変化だけでは、説明が難しいです。
次回からは、そのあたり、考えてみたいと思います。
陽光堂鍼灸院
斎藤隆行 拝
痛みの症例 2
こんにちは。
陽光堂鍼灸院の斎藤です。
今回も、痛みの症例です。
症例 2
主訴:腰痛(いつでも痛む)
- 70代女性
- 長年、肩痛・肩痛に悩んできた。
- 3週間ほど前に、起き上がったときに激痛になる。その後は、立っても座っても、横になっても痛むが、その中でも座っているのがマシなので、夜の睡眠は座ったままクッションを抱いて寝ている。
- 生活面では、かつては朝晩区別なく働いていて、とても無理をされている。食事の面は、以前も今も極端な偏食。好き嫌い激しく、しかも少食。食事の時間もバラバラ。
- リウマチ・糖尿病・骨粗しょう症を併発している。
以前からの生活習慣と、加齢による影響が重なったものとみて、腎の弱りを補う治療方針とする。今回は現病も考慮して、鍼の刺入はせず、お灸(温灸)のみを使用した。場所は、両足首の内くるぶしの下。
横になる姿勢はつらいとのことでしたが、立膝をしてもらってベッドにあおむけになっていただきながらお灸をし始めると、だんだんと腰痛が和らいで足を延ばせるようになった。30回ずつお灸をして初回の治療を終える。そのまま、眠ってしまう。
その後も治療を継続し、家の中は一人で歩けるようになる。
完全に痛みが消えてはいないけれいども、立ったり座ったり横になったりできるようになれたので、できることが増えたとのこと。
ご自愛ください。
陽光堂鍼灸院
斎藤隆行 拝
痛みの症例 1
こんにちは。
陽光堂鍼灸院の斎藤です。
前回までは痛みについての分類方法と、対処方法をざっとご紹介してきました。
ここができるとかなり良くなっていく確率は上がってきます。
やっぱり分析は大事ですね。
今回は、当院での腰痛の症例についてご紹介します。
1・主訴:腰痛(特に夜中に痛くなり、夜は熟睡できない)
- 68歳女性(初診時)、既婚
- 3年ほど前から腰痛が悪化する。(腰痛そのものは20代から)
- 睡眠中に寝返りをうつと激しく痛む。その後眠れず(ここ半年ぐらい)
- 朝方は、特に激しく痛む → しばらく座っていて、マシになる。 → その後立ち上がって30秒ぐらいすると、動けるようになる。
- また、昼間は30分以上動き続けると、睡眠中とは別の痛みが出現する。
- 痛みがきつくて、ここ半年は家事から何から何もしたくない。外にも出たくない。
- 幼少のころから、神経過敏な傾向あり。(他人の作った食事が食べられない。親以外の作った「おにぎり」は、いまでもアウト)
現症は、こういう感じでした。水の代謝が悪いようで、ひざ下を中心にむくみがあります(圧痕残る)。
この患者様の場合、主訴が腰痛なので、一番症状のきつく出ている、朝起きがけの症状を重視して「④痺証」と見立てて治療を開始。(水の代謝の不良によるもの)
初回、膝の内側のツボ、1ヵ所を使って、30分刺しっぱなし。治療後にトイレの回数も増え、夜は痛みが減少して眠れるようになる。
その後も、週に2回ほど治療をつづけて、4回治療したところで、夜の痛みはだいぶ良くなる。眠れるようになってきて、このころから、少しずつやる気も出くるようになっています。
痛みとか、骨折などで動きにくい状態になると、いわゆる「うつ」のような症状に移行することがあります。
この患者様の場合は、身体の不調が精神に影響を及ぼしていくという症例かと思います。
ケガは、怖いです。
では、ご自愛ください。
陽光堂鍼灸院
斎藤隆行 拝
痛みについて 8
こんにちは。
陽光堂鍼灸院の斎藤です。
続き・・・
いかがでしょう。これまで、痛みの原因による分類とその対処方法について1つの考え方をお伝えしてきました。けれども、どうするのかについて特定するのは、とても難しいですね。確定するには、やっぱりいろいろ情報を集めていかないといけません。
また、痛みそのものは、痛みが何のために起きているのか、痛みに目的が隠れていることもあります。
「今日はなんだか、〇〇するのいやだな」とか、思い切りストレスがかかっているとか、そういった心理面の影響が、痛みを発生させる場合もあります。現代では、むしろこういう場合のほうが大きいようです。
緊張すると悪化するタイプの痛み、または、「ホッ」とすると出てくる痛みの場合などですね。また「かゆみ」に現れることもあります。
こういう場合には、痛みの原因は心理面にあるので、そのストレスとか、心配事とか、そのようなメンタル面の調整が必要になってきます。
普段から、無意識に緊張しっぱなしの場合、身体がコリコリになってきます。睡眠不良などの症状も、出やすいことも。
適度な運動とか、「大笑い」など、身体を緩めてまいりましょう。
また、鍼灸などの治療をすることで身体を緩めていくと、心理面に変化が出てくることもよくあります。
いずれにしても、過度なストレス・心配事は、体の免疫力を低下させるので、病気にかかりやすくなってきます。ストレスため過ぎないように、普段から「大笑い」「適度な運動」も効果的です。
では、ご自愛ください。
陽光堂鍼灸院
斎藤隆行 拝
痛みについて 7
こんにちは。
陽光堂鍼灸院の斎藤です。
今回も、前回の続きです。
4・外からの影響で(冷えや湿気)、身体の中の流れが悪くなる。(痺証)
普段は何でもないような寒さや湿気などでも、体調の程度によっては、痛みを生じる原因となることがあります。身体のめぐりが悪くなってくる、典型的な状態です。
朝起床時とか、昼寝から目覚めたときなど、睡眠から覚めた状態の時に、結構激しい痛みになることがあります。睡眠中は、身体を巡るものの勢いが低下するのが原因です。なので、痛む個所をじわじわと動かしていくと、だんだんと良くなっていくのも、傾向の一つです。
この場合の症状では、一日の中でも、痛みの程度に差があることが多いです。
また、甘いものの取りすぎとか、お酒飲みすぎとか、脂っこいものばかり食べてたりすると、胃腸に負担がかかりすぎて、症状になることもあります。身体に湿気ができやすくなるからです。
仮に飲食に由来する「痺証による腰痛」だとすると、胃腸の調子を整えつつ、身体の湿気を調整するツボのうち、反応のあるツボをつかって鍼灸治療をしていきます。
漢方薬で・・・ということだと、「疎経活血湯」が候補に挙がってきます。
※ この例の場合の腰痛には、「疎経活血湯」が適応と考えらるためで、腰痛なら「必ずこの漢方薬というわけではありません」。
これまでいろいろとお伝えしてきました。
要点は、症状の原因と、どういう条件で悪化するかということが重要で、「症状だけをみて治療をしていくわけではない」ということです。このように治療をしていくと、良い方向に向かいやすくなりますし、そうならなかったときに修正もしやすいので、とても大事なことです。
たとえば、肩が凝ってるからと言って肩にあるツボを取るとは限らないし、腰痛だからと言って、腰のツボで治療をするとも限りません。
これまで、痛みについての一つの対応のしかたを、お伝えしました。
では、ご自愛ください。
陽光堂鍼灸院
斎藤隆行 拝
痛みについて 6
こんにちは。
陽光堂鍼灸院の斎藤です。
・・・つづきです。
前回の内容で、追加があります。
腎の弱りという結果になったときに、さらに肝との連動は考慮したほうがよいです。腎の弱りかつ「熱」の場合には、なおさら。
ちょっと複雑ですが、例えば腰の痛みというと、筋と骨の不調とも考えられます。五臓の役割としては、骨は腎・筋は肝のコントロール支配下にあると、東洋医学では考えます。
なので、前回ご紹介した「六味丸」だけでなく、肝の影響も加味して、漢方薬では「釣藤散(ちょうとうさん)」も考慮に入れるのがいいです。
この場合は、腰の症状よりも頭痛とか上部の症状も、強くでてくるように思います。主訴だけではなく、あわせて出ている症状も、処方には大事な情報です。
※ 腰が痛ければ、必ず「釣藤散」というわけではありません。その漢方薬が効くという診断が出たときに、これが処方されます。念のため。今までご紹介した漢方も、同じことが言えます。
今回は、前回の補足でした。
ご自愛くださいませ。
陽光堂鍼灸院
斎藤隆行 拝
痛みについて 5
こんにちは。
陽光堂鍼灸院の斎藤です。
・・・続きです。
前回の臓腑の分類について、見やすい表が公表されていました。こちらを参照してみてください。
→ http://www.jsom.or.jp/universally/examination/gozou.html
さて、今回は、
3・内蔵の不調が、身体の中の流れを悪くさせている。(臓腑・経絡病)です。
これは、1と2の合わせ技です。臓腑と経絡は、別々の名前がついてますが、植物でいえば、根っこから茎に移行するというような、一体モノのイメージ。実際は、このような症状のことが多いです。
たとえば、ストレスなんかを受けると、肝のはたらきがとても昂(たかぶ)ってくるのですが、そうすると肝の経絡上の「わき腹」が張ってくるなんてこともあります。
また、普段から甘いもの取りすぎて胃腸に負担をかけていると、胃腸に関係する経絡上(脾経上)にある、「膝の内側」を痛めやすいとか・・・。
腎に負担がかかった場合(長く続いている症状など)は、腰はもちろん、膝の裏なども痛みの生じやすいことがあります。
では、どんな処方になるのかということなのですが・・・。
例えば、腎に起因する腰痛の場合だとして、さらにそれを「冷」か「熱」に分類。(多くは腎の弱りのことが多いです。)
鍼の場合は、腎の働きを高めて、元気をつけるツボを選びます。
肘の周りとか膝の周りとか、あとは背中、おなか。反応のある所が候補になってきます。(実際に診ないとだめですね。)
漢方薬だと、「冷え」と判断された場合は、「牛車腎気丸」は候補に入ってきます。「熱」と判断された場合は、「六味丸」は候補になりえます。
※ ここであげた漢方薬は、「腰痛はすべてこれでOK」ということではありません。これは、腎虚に由来する腰痛の参考例です。
なんだか結論が出なくて、モヤモヤっとしますね。けれども、分類することって、大事なんです。
では、また次回。
ご自愛ください。
陽光堂鍼灸院
斎藤隆行 拝